スタクラ情報局
2024.03.07
【丁寧に場合わけ】絶対値つきの不等式の解法
絶対値を含む不等式
高校数学 I で1次不等式を学習しますが、そこで手強いのが絶対値記号のある不等式。
真っ直ぐに計算していくことができず場合分けが必要なので、苦手意識のある高校生は多いことでしょう。
そこで今回は、絶対値記号のある不等式の攻略方法を見ていきます。
この記事で苦手を克服しちゃいましょう!
絶対値とは
そもそも絶対値とはどういうものか。
ここではそれを学習します。
"原点からの距離"
まずは簡単な例題から。
例題
以下の数の絶対値を求めよ。
(1) 5
(2) -3
(3) 0
絶対値は、簡単にいうと「数直線上での原点 (0)からの距離」のことです。
そもそも数直線とは、上図のように数を一直線に並べたものでした。
※イメージしやすくするために整数のみ表示していますが、小数や分数も数直線上にあります。
ではこの数直線に、例題の 3 つの数を図示してみましょう。
絶対値は、数直線上での原点からの距離、つまり両矢印の長さに他なりません。
したがって (1) の答えは 5 であり、(2) の答えは 3 です。
0 というのは数直線の原点そのものなので、(3) の答えは 0 となります。]
同様に、例えば の絶対値は であり、 の絶対値は です。
絶対値記号
絶対値は、その数の両脇に縦棒(|)を書くことで表します。
例えば 5 の絶対値は と書き、 となります。
同様に , , , となります。
絶対値の定義を文字で書くと
これまでは決まった値の絶対値を考えていました。
では、ある実数 x の絶対値 |x| を計算するとどうなるでしょうか?
これまでの例を考えてみましょう。
, といった式から、絶対値記号の中身が正であれば絶対値の値は "そのまま" とわかります。
一方で , といった指揮を見ると、絶対値記号の中身が負のときの絶対値の値は "逆符号" です。
※ 0 の絶対値は 0 であり、符号をそのままにしても逆にしても同じことですね。
というわけで、一般の数 |x| の絶対値を計算するときは x 自体の符号によって話が変わってきます。
絶対値 |x| の定義は次の通りです:
この定義が出発点となるので、ここで頭に入れておきましょう。
これを蔑ろにしていると、絶対値つきの不等式が理解できなくなります。
絶対値つきの不等式の解き方
以上の内容を踏まえ、絶対値つきの不等式の解き方を見ていきましょう。
|x| だけのもの
まずは不等式に |x| しか登場しないものです。
問題
次の不等式を解け。
|x| < 3
解答
i) x ≧ 0 のとき
|x| = x であるため x < 3
x ≧ 0 に注意して 0 ≦ x < 3
ii) x < 0 のとき
|x| = -x であるため -x < 3 つまり x > -3
x < 0 に注意して -3 < x < 0
i), ii) を合わせて -3 < x < 3
ポイント
絶対値記号の定義を思い出しましょう。
今回の場合 x の正負によって場合分けが必要です。
各々の場合分けで不等式を解き、それらを合わせて不等式の答えを出します。
絶対値の意味を理解している場合は、いきなり |x| < 3 から -3 < x < 3 と計算できます。
絶対値というのは数直線上での原点からの距離であったためです。
なお、解答の太字部分に注意してください。
| x - a | タイプ
次は少々レベルアップして、絶対値記号の中に定数が加わります。
問題
次の不等式を解け。
|x - 1| > 2
解答
i) x - 1 ≧ 0 つまり x ≧ 1 のとき
|x - 1| = x - 1 より x - 1 > 2 つまり x > 3
x ≧ 1 に注意して x > 3
ii) x - 1 < 0 つまり x < 1 のとき
|x - 1| = -(x - 1) = 1 - x より 1 - x > 2 つまり x < -1
x < 1 に注意して x < -1
i), ii) より x < -1, x > 3
ポイント
絶対値記号の中身が複雑になりましたが、やることは一緒。
絶対値記号の中身の正負で場合分けをするだけです。(赤字部)
ちなみに、今回の解も数直線で表示すると納得しやすいです:
|x - 1| > 2 は、数直線で "1" からの距離が 2 より大きいことを意味します。
"1" からの距離が 2 以下であるのは上図の赤矢印ですね。
したがって、その外側(青矢印、大きい方にも小さい方にも存在)が解となるのです。
絶対値以外にも x があるタイプ
問題
次の不等式を解け。
|4 - x| > x
解答
i) 4 - x ≧ 0 つまり x ≦ 4 のとき
|4 - x| = 4 - x より 4 - x > x, よって x < 2
x ≦ 4 に注意して x < 2
ii) 4 - x < 0 つまり x > 4 のとき
|4 - x| = x - 4 より x - 4 > x つまり -4 > 0
これを満たす x は存在しない。
i), ii) より x < 2
ポイント
前の問題と異なり右辺にも x がありますが、場合分けの仕方自体は変わりません。
絶対値記号の中身が正( 0 以上)の場合と負の場合に分けて、それぞれの場合で不等式を解けば OK です。
複数の絶対値記号があるタイプ
では最後に、複数の絶対値記号が登場する不等式を攻略します。
問題
次の不等式を解け。
|7 - x| > |2x + 5|
解答
, であることを用いると以下のようになる。
i) のとき
7 - x > -2x - 5 より x > -12
に注意して
ii) のとき
7 - x > 2x + 5 より
に注意して
iii) x > 7 のとき
x - 7 > 2x + 5 より x < -12
これと x > 7 を同時に満たす x は存在しない。
i), ii), iii) より
ポイント
難しい問題でした。
絶対値記号が複数あるので、その各々について場合分けが必要となります。
これまで 2 つの場合分けであったのに今回は 3 つであるのはそのためです。
イメージ的には次の通りです。
確かに、数直線が 3 つに分かれていますね。
まとめ
今回は、絶対値記号を含む不等式の解法を紹介しました。
まずは何より、
絶対値の定義
|x| の場合分け
をマスターするのが先決です。
複雑な問題でも、上記 2 点をよく理解していれば解答することができます。
よく読み返して、この記事の問題は全て解けるようにしておきましょう!